2008年09月
トンガから帰国して、まだ十分に疲れも取れぬままに、明日からまたWEB-LUEのロケに出かける。今回は、初めて訪れるサンガラキへのクルーズ。
問題なのは、新たにオーダーしているウエットスーツが出発には間に合いそうにないということ。現地の情報もまったく調べていない。
クルーズ船に乗船するので、多分現地からの情報はアップできない。

3日目は、風も強く、ペアを見つけて海に入ったものの、それほどの成果も無く終了した。
そして、最終日の9月12日。まだ風はあったが、なんとか午前中から良いクジラが見つけられるようにと海に出た。僕とエミさんはオンゴ、トニーはピーターがスキッパー。
あまり船がいかないノースベイ方面に向かうと、別のオペレーターの船に親子がついているのが確認できた。普段なら、オンゴはこの時間から他の船にクジラを譲ってもらうなんて、絶対しそうにないのだけど、頭痛も激しいし、最終日だからというのもあるのだろう、早めにその船のスキッパーに連絡を取って、次に譲ってもらえることを確認すると、その近くで順番を待つことにした。
ところが、しばらくすると、別の船が姿を見せた。どうもおかしいと思って、クジラを持っている船に連絡するが、まったく応答が無い。新たに来た船にも連絡してみるが、反応が無い。明らかに無視されているとしか思えない。
何だか、嫌な雰囲気になってきた。案の定、その新たに来た船が、こちらと連絡すら取らないまま、クジラを譲り受け、今まで持っていた船は、猛スピードで走り去っていった。
船同士は同じオペレーターのだけど、こちらが先に譲ってもらうことに、スキッパーからオッケーをもらっていたにも関わらず、何の連絡もせず、こちらの連絡にも応答せずに、クジラを別のボートに譲るということに怒りを感じた。
譲ってもらえなかったことに対してではない。もし、同じ会社の他の船に譲るから、こちらに譲れないというなら、最初からそう言えばいい。僕らだって、人に譲ってもらうよりは、自分たちの力でクジラを探す方がいいのだから。
ただ、「次に譲る」と言っておきながら、その後の連絡をまったく無視して、後から来た別の船に譲ってしまうというのは、それまで1時間くらい、何もせずに待っていた僕らの時間がまったく無駄になってしまったということなのだ。それも最終日に。
オンゴは、何も言わず「別のクジラを探しに行こう」と言って、その場を離れようとしていた。
皆、納得はいってなかった。オンゴも、僕も、エミさんも乗っていたゲストも怒っていたのだけど、頭痛を押して海に出てくれたオンゴにこれ以上は負担をかけたくなかった。結局喧嘩するとなれば、オンゴが対応しなければいけない。言い合いしていて、頭に血が上ってしまったら、さらに彼の頭に負担がかかる。
納得はいかなかったし、最終日にこんな思いをさせられて、悔しかったけど、「別の良いクジラを探しに行こう!」とオンゴに伝える。
しかし、他の海域を探していたトニーも、結局何も見つからず、こちらに向かってきていた。僕が事情を説明すると「でも、探してたけど、何もいないよ。長くかかるかもしれないけど、順番を待った方がいいよ」とトニー。
しかし、オンゴは、もうここにいる気も、その親子を譲ってもらう気もまったくなくなっているようだった。
少ない可能性かもしれないけど、とにかく僕らはそこを離れ、クジラを探しにでかける。これで見つからなかったら洒落にならない。嫌な思いだけ残して終わることになる。それにゲストにしてみれば、しょうがないから、次の船が終わるまで待ってもらいたいと思っていたに違いない。
だから、どうしてもクジラを探さなければと思っていた。ランチ後、遥か外洋の方でブリーチングしているクジラを発見した。数頭の群れのようだ。オンゴも僕も「こっちに来い、こっちに来い」と願いながら、そちらの方向に船を進める。
するとクジラたちの方も、こちらに向かって激しく移動してくるのが確認できた。はっきりとはわからなかったが、少なくとも6頭は一緒のようだった。タイミングよく、一番外洋側にある島の浅瀬に沿って群れはゆっくり移動を始めた。透明度もよく、浅い。
僕らはエントリーして、何度も何度もその群れにアプローチした。群れの合計は8頭。今まで、こんな浅い、透明度の良い海域で、これほどゆっくり泳ぐ群れを見たことはなかった。8頭全てを1カットに撮りこむことも可能な状態だった。

8頭もの群れが、浅い外洋のリーフをゆっくりと移動する姿は壮観だった。何度も何度もアプローチをして撮影をした。泳ぎ過ぎて、吐き気を催すくらいだった。最後には、ホワイトパッチと呼ばれている、浅い砂地のエリアにメスが留まり、1頭のオスが、メスを自分のものにしようと迫ってくる他のオスを何度も何度も追い払うシーンをずっと目撃することができた。


もう1隻の方も、なんとか親子と泳いだ後、この最後のホワイトパッチの場所で一緒に海に入り、このやり取りを目撃することができた。
譲ってもらえなかったおかげで、逆に良いものを最後の最後に見ることができた。あのまま不満を残して、いらだって文句を言ってるだけだったら、どうなっていたかわからない。気持ちを切り替えて、絶対良いクジラを見つけようとした思いが通じてくれたことに、感謝し、僕らは全員でペットボトルの水で乾杯をして最終日の帰路についた。
今は日本への帰路のシンガポール空港にいる。今日の午後、1ヶ月半ぶりに家族の顔を見ることができる。

トンガ出発前、現地にて、子供たちにクジラのスライドショーを見せて、船をチャーターして何人かの子供たちに実際に海でクジラを見てもらおうという、プロジェクトを開催すると伝えた。
天候不良や、様々なトラブルも発生し、実際にポスターで告知した計画通りのスケジュールで行えなかったものの、日にちをずらしたり、規模を小さくしたりしながらも、なんとか開催することができた。


このプロジェクトは、元々JAICA隊員で歯科医師として現地に赴いているタカコさんに、僕が歯の治療してもらったときに、「近所に住む子供たちにクジラのスライドを見せてあげて欲しい」とい言われて、見せたことから始まった。

それ以前から、元々学校の教師だった、スキッパーのオンゴや、毎年一緒にトンがに来ているトニーも、トンガの子供たちを船に乗せてクジラを見せてあげたいという話をしていたこともあり、大々的に開催しようということになって進められてきた。

実際には、僕やトニー、エミさんはトンガ語もしゃべれず、子供たちへのクジラの解説などは、ノーファやオンゴ、観光局のブルーノといったトンガ人たちが行った。運営も、タカコさん他、アメリカの青年海外協力隊のメンバーなどが中心となって開催された。



そういう人たちの努力もあり、当初思っていたよりも多くの子供たちが集まってくれて、初めて行われたプロジェクトとしては、十分に成功したと言えるものだったと思う。
企画当初は、「クジラを食べる日本人が参加しているプロジェクトなんて」と言われることもあったのだという。しかし、そういう風潮に対しても、根気強く対応してくれた現地スタッフの苦労があった。このプロジェクトは、トンガ人、パランギ(トンガ語で白人の意味)、日本人が協力して、現地の子供たち対象に行われたことに意義があった。
プロジェクトに参加してくれた子供たちには、消しゴム付鉛筆や歯ブラシ、キシリトールのガムなどセットになったおみやげをプレゼントした。そのときに必要な鉛筆をタカコさんから持ってきて欲しいと言われたので、僕自身何ダースか持ってきたのだけど、足りなくなる可能性もあったので、その旨を今回のホエールスイミングに参加して頂いた皆さんに、「持って来れる方には、1ダースだけ持ってきてもらえれば、助かります」と伝えたところ、ほぼ全員が鉛筆や消しゴム、ボールペンなど様々な筆記用具を持ってきてくれた。
しかも、1ダースどころか、一人で10ダースも持ってきてくれた人もいれば、かわいらしいキャラクターの鉛筆なども多数持ってきてくれた人もいて、その総本数は、1000本を越えた。
今回、プロジェクトに参加してくれた子供たちに1本ずつ配っても、1000本以上あまってしまったために、これをどうするか悩んだのだが、ババウ諸島でも、特に離島に住んでいる子供たちが通う小学校に寄付してもらうよう、オンゴやノーファにお願いした。
ちなみに、離島も含む、ババウ諸島の小学生の総数は2500人程度だそうだ。
写真だと、オンゴが独り占めしてるみたいに見えるけど、実際にはちゃんと子供たちに届けてもらえるようにお願いしているので、ご心配なく。

プロイジェクトに参加してくれた子供たちからの感想は、もう少ししたら、また皆さんにご報告します。トンガ語で書いているので、訳すのに時間かかるみたいだから。
ホエールスイミングに参加して頂いた皆さんには、なによりも、カメラ機材など、重たい荷物を持ってきていながら、子供たちのために、沢山の、鉛筆という「善意」を持ってきてくださったことに、心より感謝申し上げます。

先週は、天気の厳しい状況により(毎日25ノットを超える強い風)海へほとんど出られなかった。
クジラスイムツアーの第5週目のメンバーが先週の月曜日に到着してから木曜日までクジラと一緒に泳ぐことが出来なかった。しかし最後の日、僕と恵美子とタカジは、かなりのプレッシャーを抱えながら海に出た。三隻は別な海域を周りそれぞれクジラを探した。
思った以上に風は強く、波も荒く、その影響で探す範囲はぐっと狭まった。
恵美子の船から2頭のクジラを見つけたと無線が入った。僕達は期待をかけた。しかし水中に長く潜ってばかりで海になかなか入れないと情報が入った。絶望的な心境だった。
とその時、他の船からの連絡でゆっくり泳げるクジラがいると無線が入った。それも親子とエスコートだった。救いの神だった。きっとゲストよりも僕達のほうが喜んだ。
透明度はそれほど良くなかったが、母親もエスコートもリラックスして、子クジラはとってもフレンドリーだったので、全員がクジラとたっぷり泳ぐことが出来た。
この子クジラは今年で13番目。名前を「Val」(スカンジナビア語でクジラ)と名付けた。

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